“TENJIN NEO CITY POP” を掲げ、福岡から日本全国に向けてポップサウンドを発信する 4 人組バンド「Deep Sea Diving Club」。12月1日grafにて自身の企画である「SEA SIDE PARTY vol.1 」を開催。イベントでは12月7日にリリースした最新ウィンターソング「Miragesong」を初披露した。今回は、そのイベントの様子をレポート！

福岡から全国に向けて独自の音楽を発信している「Deep Sea Diving Club」。彼らのオリジナル企画としてのイベント『SEA SIDE PARTY vol.1』がライブハウスgrafで行われた。

正直なことを言うと、彼らの音楽をライブで聴くのは初めてだったこともあり期待感いっぱいに会場へ向かった。イベントには対パンとして「UEBO」「えんぷてい」が参加し、異なる音楽性で会場を沸かせていた。

最後に企画者である「Deep Sea Diving Club」が登場しチューニングを終えるやいなや「lostpeople」から始まった。スタートからガツンとした楽曲で観客の心を鷲づかみにするライブとは異なり、随分前から会場にいて、音遊びの流れで音楽が始まったようなまったりとした始まりは、逆に観客の視線を吸い寄せるようだ。そこから「Left Alone」「Just Dance」と軽快で心地よいシティポップサウンドが続く。

個人的にナイアガラトライアングルやシュガーベイブのようなシティポップを代表するアーティストの音楽をリアルタイムで聴くことはできなかったが、そこからさらに進化したシティポップを体感できていることに心地よさを感じずにはいられなかった。（自然な流れで盛り込まれたラップは、ゴリゴリのラップよりも聴き心地がよく、個人的にはどストライク！）

印象的だったのは、谷颯太（Vo.）は、音楽空間を作ることが天才的に上手いということ。途中、谷が「僕たちも楽しみながら音楽をやるので、自由に、それぞれ、僕たちの音楽を楽しんでください！」とMC。それほど広くはないライブハウスだったにも関わらず、歌っている彼が纏っているステージ上の空気、そして観客の間に漂っている音楽に包み込まれるような感覚は、まさに音楽を身体で感じるという言葉そのもの。その楽しめる空間が（物理的にというよりも感覚的に）提供されていると感じた自分に少し驚いた。それは近くで他の観客が踊っていても、場所の不自由さを全く感じられなかったからだ。

フロアにいた観客も同じ感覚だったのだろう、最初は動かずに聴いていた人も自然に身体を動かし始め、思い思いにその場の空気を楽しんでいた。音楽の力ってこれだよな、とうれしく感じた瞬間でもあった。思い返しても、特に記憶に残っているのは「FLACTAL」。やや客観性に欠けたレポになるが、この楽曲はライブが終わって今でもずっと聴いているくらい好きだった。

中盤「フラッシュバック’82」「cinematiclove」からメンバー紹介に入った。「Deep Sea Diving Club」は、Gt.大井隆寛、Dr.出原昌平、Ba.鳥飼悟志の四人からなるバンド（この日はキーボードの中野ひよりも参加）。それぞれのプレイが際立つ場面も多いのだが、どれも行き過ぎることなく、しかし個性を存分に表現できる演奏をみせている。バンドにおける楽器のバランスは、実はとても重要でヴォーカルだけが際立っていたり、ドラムやベースのリズム隊が強すぎたりすると、聴く者は戸惑ってしまうのだ。その点、「Deep Sea Diving Club」は、それぞれの個性も残しつつ、バントとしての楽曲のクオリティーの高さも保っている。

正直なことを言うと、こんなバンドが福岡にいたのだ！と驚きを隠せなかった。

後半になってくると、ダンスフロアになったように、身体を動かしハンドクラップしたりと、会場が一体感となっての大盛り上がり。ライブも最後に近づいたころに、12月7日にリリースされた新曲「Miragesong」を披露。

「思い切りポップに寄せて作った」という谷の言葉どおり、切ないメロウなスタートから段々と盛り上がっていくサビという流れも、見事なほどに冬にぴったりのJ-POPに仕上がっていた。低音からゆっくり高音へそしてファルセット、地声、様々な歌唱を揺るぎなく安定感を持つ歌声も、J-POPにピッタリとハマっていた。

いい音楽を聴いた心地よさと、新しい発見に、足取りが自然に軽くなっているのを感じながら、ライブハウスを後にした。“TENJIN NEO CITY POP”……彼らには、もっと大きなキャッチワードがつく日が近づいているのではないだろうか。

（text by Aya.T）

Deep Sea Diving Club

https://deepseadivingclub.jp/